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JBA主催セミナー

JBA主催セミナーで中南米諸国のビジネス環境について講演(5月9日、トーランス市)

TWI Global Businessの水野が5月9日にトーランス市にて開催された南カリフォルニア日系企業協会(JBA)主催セミナーで講演しました。講演内容は「変化する中南米ビジネス環境とトランプ・リスク~2017年中南米経済展望」について。日系企業のあいだで話題となっているトランプ新政権の通商政策の見通しに加え、ブラジルやアルゼンチンにおける近年の政治的変革がいかにビジネス環境の改善に影響しているかなどについて説明しました。

セミナーには主にロサンゼルス地域から70名程にのぼる企業関係者にご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。参加者やJBAの皆様には心から感謝申し上げます。

「NAFTA脱退」「NAFTA見直し」「35%にのぼる国境税の導入」――トランプ新政権はメキシコ製品の輸入に対して制限的な政策の導入を検討する旨の発言を繰り返しております。近年には多くの日系自動車メーカーがメキシコに進出していることから、この問題は日本でも頻繁に取り上げられています。 しかし、保護主義的な通商政策の導入には多くの障壁があります。米国の国内法、WTO協定、米国内の企業や議会の反対などなど。トランプ大統領の発言を一つ一つ検証していくと、実現できる政策はかなり限定的であることが分かります。たとえば米国がNAFTAを脱退しても、メキシコとカナダからの輸入に関税を課すためには議会承認が必要となります。一方、米国の輸出製品はメキシコとカナダの関税の対象となり、大きな損害を受けることになります。「言うは易く行うは難し」です。

安心できない面もあります。8月に開始予定のNAFTA再交渉では原産地規則の改定に関する議論が進められる可能性があります。原産地規則とは、たとえばメキシコで製造した製品を米国に輸出する際、米国側で免税措置を受けるためのルールを指します。米国政府は、現行の原産地規則を厳格にすることで、メキシコの企業がアジア諸国などから調達している原料や部材を米国やカナダからの調達に切り替えることを狙っています。在メキシコの日系企業の中には調達先の切り替えを余儀なくされる企業がでてくるかもしれません。

南米に目を向ければ、2000年代に見られた左派政権の蔓延がおさまり、アルゼンチンやブラジルといった大国を中心に右傾化の兆しが見られています。アルゼンチンでは元ビジネスマンのマクリ氏が2015年に大統領に就任、前のポピュリスト政権が導入した数々のビジネス制限的な措置を廃止するなど、市場の開放を積極的に進めています。ブラジルでは2016年の左派労働党のルセフ前大統領の罷免により、前副大統領のテメル氏がその座を引き継いでいます。テメル大統領は前政権で膨れ上がった財政赤字の解消や石油市場の民間企業への開放に加え、労働改革や年金改革などに取り組んでいます。

リスクも少なくありません。アルゼンチンは今年10月に中間選挙を迎えます。国民の支持を取り付けるためにも高止まりしているインフレや失業率の改善、外貨獲得の生命線である対内直接投資の拡大などに尽力する必要があります。ブラジルでは何といっても政治汚職問題です。テメル大統領自身の不正献金疑惑が持ち上がり、政治リスクがいっそう高まっています。

両国ともに難所を乗り越えて改革を進めていくことができるか――しばらく注目を集めそうです。

JBA Seminer