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TWI Global Business ニュースレター 第17号 12/29/2016

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

ポイント1.トランプ新政権の政策の中南米への影響(2):インフラ整備のメリットは「バイアメリカン」次第

 

ポイント1.トランプ新政権の政策の中南米への影響(2):インフラ整備のメリットは「バイアメリカン」次第

NAFTAの見直・脱退、米国内の違法移民の追放やメキシコとの国境における壁の建設など、トランプ氏が矛先をメキシコに向ける場面が選挙戦では多く見られました(トランプ新政権の政策の中南米への影響(1):在メキシコ企業は米国の貿易救済措置に注意リンク)。メキシコ以外の中南米諸国についてはオバマ政権が進めてきた対キューバビジネスに関する規制緩和の見直しに言及していますが、そのほかの国にはあまり触れていません。

トランプ氏のNAFTAに対する反感は、米国内の製造業労働者の職が労賃の安いメキシコに奪われているとの考えに基づくものです。メキシコ以外で米国とFTAを結んでいる中南米諸国には中米諸国、パナマ、ドミニカ共和国、コロンビア、ペルー、チリがあります。無論、選挙戦では一般論として「過去に米国が締結したFTA」を問題視する発言もあったために予断は許しませんが、これらの国とのFTA発効後に製造業の職を奪われたというイメージは米国内にはあまりなく、その点ではこれらのFTAが槍玉に挙げられるリスクはメキシコほど高くはないと考えられます。

ブラジルとアルゼンチンは米国とFTAを結んでいないため、そもそもトランプ氏による協定の見直しの対象にはなりません。両国の対米輸出額(2015年)はそれぞれ全体の輸出額の12%、6%を占めるにすぎず、全輸出額の81%が米国向けのメキシコと比べてもエクスポ―ジャーはかなり低い水準です。万が一にトランプ新政権が相手国を問わずに関税を引き上げるような措置を採ったとしても、メキシコが受ける損害の比ではないでしょう。

貿易協定以外にも中南米諸国の経済に影響を与えると考えられる公約がいくつかあります。一つは米国内のインフラ投資です。トランプ氏は最大一兆ドルにのぼる橋梁や道路インフラの整備・拡充を公約しています。一兆ドルはメキシコの2015年GDPとほぼ同じ規模です。インフラ整備・拡充のための連邦予算の確保には財政規律を重んじる共和党多数議会の承認を必要とするため、一兆ドル規模のインフラ整備・拡充が実際に可能かどうかは分かりません。しかし、公共事業を請け負う国内の建設企業にとっては商機となります。加えて、米国向けに鉄鋼、金、銀、ニッケルなどを輸出するメキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリなどにとっても鉱物資源輸出拡大のチャンスといえます。

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ただし、メリットの享受は、「バイアメリカン」条項が導入されるかどうかで大きく左右されます。米国の政府調達では入札の条件として国内産鉄鋼製品や資材などの使用を義務付ける内容の「バイアメリカン」規定がたびたび導入されてきました。2009年2月に成立した「米国再生・再投資法(景気対策法)」では、同法に基づくインフラ整備・拡充には米国製の鉄鋼製品の使用、公共事業で使う各種製造品にも米国製品の使用が義務付けられました。インフラ整備の主体である州や市などの地方政府が、景気対策法に基づき連邦政府より補助金を受ける場合にバイアメリカンが適用されました。

製造業の雇用創出や輸入に対する非難が目立つトランプ氏の公約を考慮すれば、インフラ整備・拡充のための予算が成立するとしても、上記の「バイアメリカン」条項が導入される可能性は高いと考えられます。過去のように、国内調達で賄うことが難しい場合や国産製品の使用がコストを一定以上に引き上げる場合などは適用除外とする規定が含まれる可能性はありますが、中南米諸国にとってはせっかくの鉱物資源や資材の対米輸出機会が損なわれることになります。

トランプ新政権のインフラ整備・拡充のメリットは「バイアメリカン」の有無が大きく影響しそうです。