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TWI Global Business ニュースレター 第18号 1/19/2016

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

トランプ新政権の政策の中南米への影響(3):米国のエネルギー開発で勝ち組・負け組が鮮明に

 

トランプ新政権の政策の中南米への影響(3):米国のエネルギー開発で勝ち組・負け組が鮮明に

「我が国のエネルギー支配を戦略的経済・外交政策の目標」とし、「国内に眠る50兆ドル相当の油田の開発を進め」、「OPECのカルテルやその他の我が国利益に敵対する国からのエネルギー輸入の必要性から完全に脱却」する―――トランプ氏のエネルギー政策に関する公約の要旨です。エネルギー関連閣僚候補の顔ぶれを見ても彼の本気度がうかがえます。環境保護庁(EPA)長官にはスコット・プルイット現オクラホマ州司法長官を指名しました。プルイット氏は石油業界との結びつきが強く、地球温暖化懐疑論者で有名です。温暖化防止のためにオバマ政権がエネルギー産業に課してきた多くの規制の行方が不透明となっています。

無論、ふたを開けてみなければ分かりませんが、トランプ新政権が公約どおりに国内の原油・天然ガス開発や生産の拡大に踏み切れば、価格の低下および対米輸出の減少を通じて中南米の生産国に大きな影響をおよぼすと予想されます。まずはベネズエラ。同国の石油公社PDVSAによる原油輸出額は全体のおよそ95%を占めます。国際価格の低下、そして最大の輸出先の一つ、米国への輸出減少は、歴史的な景気後退に陥っている同国にとって大きな痛手となるでしょう。コロンビアの対米原油輸出も重要なドル箱です。2016年11月に議会承認された左翼ゲリラFARCとの和平協定に基づき、政府は元ゲリラ兵士への教育や地方のインフラ整備向けに多額な予算を用意する必要があります。トランプ氏の政策はコロンビアの財源確保に大きな障壁となりえます。

メキシコは2013年に施行されたエネルギー改革以降、それまでの石油公社ペメックスによる独占を廃止し、民間企業に対して同国のエネルギー市場を段階的に開放しています。国際価格が低下すれば、原油・天然ガス鉱区の入札を遅らせるリスクが生じます。他方、国境を跨ぐパイプライン建設や米国内で輸出向け精製施設などエネルギー関連インフラの整備・拡張が進むにつれて安価な米国産の輸入が増加していくことも見込まれます。たとえば現時点でもメキシコ国内の天然ガス価格は米国のそれの二倍近くに達するといわれています。安価な米国産天然ガスの輸入が増えれば、メキシコ国内の製造業が生産コストを抑えることができるようになります。加えて、中米諸国やカリブ諸国の多くはエネルギー輸入国のため、輸入価格の低下はポジティブな影響をもたらすでしょう。

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中南米の原油・天然ガス生産国の多くでは未だに政府系企業がエネルギー市場を闊歩しています。しかし、近年には生産の非効率性が問われており、上記のとおりメキシコではペメックスの独占が終わり、徐々に民間企業に市場を開放する動きが見られています。ブラジルでもテメル新政権が公的企業のペトロブラスによる独占にメスを入れ、民間企業の独資による鉱区の開発を可能にしました。エネルギー価格の低下は政府系企業にさらなるプレッシャーを与えると同時に、改革の必要性に関する議論を呼ぶ可能性があります。