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TWI Global Business ニュースレター 第29号 01/30/2018

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

実現なるか、EU・メルコスールFTA

 

実現なるか、EU・メルコスールFTA

南米南部共同市場(メルコスール、加盟国:ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ〈注1〉)は自由貿易路線のブラジル・テメル政権、アルゼンチン・マクリ政権主導による域外諸国・地域との経済関係強化が鮮明となっています。

メルコスール加盟国の通商政策で最も注目すべきはEUとのFTA交渉です。目標としていた2017年内の合意は、EU側のメルコスール農産品に対する警戒感がとけずに達成できませんでしたが、2018年内の合意に向けて双方が本腰を入れていくことは間違いないといえます。テメル大統領は2017年12月にブラジリアで開催されたメルコスール首脳会議にて「EUとの協定の合意がはじめて現実的な見通しとなった」と述べています。実現すれば両地域合計名目GDP18.6兆ドル(IMF、2016年)、人口7億7,570万人(国連、2017年7月時点)の巨大な自由貿易圏が創設されることになります。 メルコスール加盟国は輸入品に対して高い一般関税率(MFNレート)を設定しています。世界貿易機関(WTO)資料によると、単純平均(2016年)では農産品が10.0%、鉱工業品が14.1%、全体では13.5%にのぼり、EUの一般関税率(農産品:11.1%、鉱工業品:4.2%、全体:5.2%)と比べてかなり高い水準となっています。完成車の輸入には35%の高関税を課しており、ブラジルの場合には輸入品に課されるその他の税金を含めると、消費者の手元に届くころには輸入価格の二倍近い価格になります。EU・メルコスールFTAの発効により、EUの輸出製品は日本を含む他の競合国と比べて競争力が格段に高まることが予想されます。

域外国との経済関係強化の動きはこれにとどまりません。EU以外にもメルコスールは2016年4月に南部アフリカ関税同盟(SACU)との特恵貿易協定のほか、2017年9月にはエジプトとのFTAを発効させています。また、中南米域内の貿易自由化を目指す組織ラテンアメリカ統合連合(ALADI)(注2)の枠でコロンビアとのあいだで経済補完協定(ACE72号)を同年12月に発効、既存のACE59号の自動車や繊維製品などの市場アクセスを大幅に改善しました。 2018年もメルコスールのFTA締結に向けた動きは加速しそうです。テメル大統領は2017年7月にアルゼンチンで開催されたメルコスール首脳会議でカナダ、日本、ASEAN諸国との経済対話の深化の重要性について発言したのに続き、12月の首脳会合ではカナダと韓国とのFTA交渉を2018年に開始する準備が整った旨述べています。また、同会議にてシンガポールとのFTAに向けた事前協議を開始すると加えています。

日本企業はEUと同様に韓国とのあいだで競合する製品が多く、韓国とのFTAが実現すればブラジルやアルゼンチン市場での競争力の大きな低下が危惧されます。日本は経団連がブラジル全国工業連盟(CNI)とのあいだで二国間の経済合同委員会を開催していますが、2017年8月にクリチバで開催された会合では、2015年9月に両者が締結した日本とメルコスールの経済連携協定(EPA)に関する政府への提案についてさらにアップデートしていく旨合意しています。 2018年10月にブラジルで控えている大統領選による政策変更リスクなどは残りますが、ブラジルとアルゼンチンの現政権による積極的な対外経済関係改善への取り組みは、高い関税で閉ざされているメルコスール市場へのアクセスを拡大する絶好の機会といえます。

注1.ベネズエラもメルコスールの加盟国だが、2018年1月時点では同国の政情不安を背景にメルコスール協定の「民主主義条項」に基づき加盟は一時停止している。

注2.中南米13カ国が加盟する、地域経済統合を目指す組織。81年3月設立。加盟国はそれぞれ特恵貿易協定である経済補完協定(ACE)の締結を通じて域内の貿易自由化を目指している。

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