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TWI Global Business ニュースレター 第30号 04/09/2018

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

米州首脳会議の成果は期待できず

 

米州首脳会議の成果は期待できず

北米と中南米諸国のトップが一堂に会する米州首脳会議が4月13、14日にペルーの首都リマにおいて開催されます。米国からはトランプ大統領が出席する予定となっています。政府関係者によると、この首脳会議でトランプ大統領は中南米諸国の貿易パートナーは中国ではなく米国であるべき、と主張する旨政府関係者が述べているようです(AmericaEconomia紙)。 トランプ政権誕生以降に中国と中南米諸国の経済関係強化の動きを批判するのはトランプ氏が初めてではありません。先般に国務長官を辞職したばかりのティラーソン氏は、2月の中南米訪問に先駆けて、「中国国民の利益のみを求める新たな帝国主義のパワーを中南米諸国は必要としていない」と中国をあからさまに非難すると同時に、「米国は一方的なリターンを生むような短期的な取り決めを結ばない」と中南米諸国に信頼を呼びかけました。

中国が中南米諸国との経済関係強化の動きを強めていることは疑いのない事実です。1月22日にチリの首都サンティアゴで開催された、中南米33カ国が加盟する中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の閣僚級会合に中国の王毅外相が参加、中国が世界中で進めているシルクロード経済圏構想「一帯一路」への参加を大々的に呼びかけました。ホスト国であるチリのムノス外務大臣は「中南米と中国の新たな歴史の幕開け」と賞賛すると同時に、「(政治・経済的協力を含む)本会合は保護主義や単独主義に対する拒絶を示している」と暗に米国を非難する発言を残しました。

実態経済でも中国はプレゼンスを高めています。すでに欧米諸国を抑えてブラジル、ペルー、チリなどの中南米主要国のトップ貿易パートナーに成長しました。投資にも積極的です。米大西洋評議会のデータよると、2010年以降の中国企業による中南米諸国企業の買収額は年平均60億ドル、2017年には100億ドルに達する見通しとなっています。過去には自国の資源・食料確保のための投資が目立っていましたが、近年には特にブラジルで通信やエネルギー、インフラといった基幹産業、国内販売向けの自動車生産などへの進出も見られます。国家電網は2017年12月に国内主要配電会社のCPELエナジーへの出資比率を54.6%から94.7%に引き上げました。国家電力投資集団公司(SPIC)は同年9月にゴイアス州サンシモン水力発電所を22億5,700万ドルで購入した。招商局港口(China Merchants Port)は同月にパラナグア港を運営するTCPの株を9億3,500万ドルで買収、90%まで出資比率を引き上げたばかりです。

一方の米国はどうでしょうか。オバマ前政権はキューバとの国交正常化を進めましたが、基本的にはアジア諸国との関係強化に終始しました。トランプ政権は環太平洋パートナーシップ(TPP、中南米諸国ではメキシコ、チリ、ペルーが参加)からの脱退、メキシコとのNAFTA再交渉、メキシコや中米諸国からの移民の制限、対ベネズエラ制裁など「アメリカ・ファースト」政策に基づく、同地域での嫌米を誘発するような政策の発表・導入に枚挙にいとまがありません。

トランプ政権に対する厳しい見方は中南米諸国のあいだで特に強いようです。ギャラップの1月24日発表世論調査によると、2017年にトランプ大統領の政策を支持すると回答した割合は世界が24%のところ、中南米諸国は16%と低く、不支持率は64%にのぼっています。訪問先で対ベネズエラ制裁措置の理解を求めたティラーソン前国務長官はアルゼンチンやジャマイカでは一定の理解を得たようです。しかし、メキシコではベネズエラ国民やカリブ諸国への損害を理由にメキシコによる原油輸入禁止の可能性をコールドウェル・エネルギー長官がきっぱりと否定しました。

米州首脳会談開催地のペルーではクチンスキ―大統領が汚職問題を巡り辞職したばかり。トランプ大統領は先の首脳会談でクチンスキー氏との個人的な関係を深めたといわれていますが、当の本人はすでにいません。主要国のブラジル・テメル大統領、メキシコ・ペニャニエト大統領、コロンビア・サントス大統領は2018年にそれぞれ任期を終えるため、(米国の厳しい要求を呑んでまで)関係強化に本腰を入れる可能性はあまり考えられません。

米州首脳会議で中国の勢いを抑えるような成果は期待できないと考えた方が無難のようです。

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