TWI Global Business LOGO

TWI Global Business ニュースレター 第32号 06/01/2018

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

米中の貿易戦争で恩恵も?

 

米中の貿易戦争で恩恵も?

米国と中国は貿易を巡り応酬を続けています。5月に中国が米国製品のより一層の購入を約束したことで緊張は少し和らいでいますが、中国の知的財産権問題や産業計画など米国にとって重要な問題は残っており、予断を許さない状況といえます。両大国が貿易戦争へと突入すれば、その影響は両国の経済のみならず、世界各国へと広がっていくでしょう。

中南米諸国など新興国では金融市場の不安定性が増すと考えられます。ここへきてアルゼンチン・ペソの急激な下落と周辺国への波及が連日金融市場を騒がせていますが、貿易戦争が勃発すれば不安定性は一層増していきます。企業の投資意欲の減退も避けられません。 加えて、米国が中国に対して輸入制限措置を発動すれば、行き場をなくした中国製品が中南米諸国へと流れるリスクもあります。安価な「メード・イン・チャイナ」の輸入急増は世界各国の産業にとって脅威となります。米国政府が3月に決定した、1962年通商拡大法232条調査に基づく鉄鋼セーフガード措置の発動を受けて、ブラジルは中国産の鉄鋼製品の自国への輸入急増を警戒、一時的に関税を引き上げるアンチダンピング税などの発動を要望する声が上がっています。

じつは米中の貿易戦争は中南米諸国にとって悪いことばかりではありません。米国は伝統的に中南米諸国にとって重要な輸出先であることに変わりはないですが、近年には中国もブラジル、ペルー、チリなどの中南米主要国のトップ貿易パートナーに成長しつつあります。ブラジルの対中輸出には大豆、鉄鉱石、原油、牛肉といったコモディティーが上位を占めています。中国が米国産のコモディティーに対して関税を引き上げれば、調達先を米国から他国へと切り替える中国企業が増え、必然的にブラジルにとっては対中輸出拡大の機会が増すことになります。加えて、ブラジルには世界的航空機メーカーのエンブラエルがあります。2017年の同国の対中航空機輸出額は全体の1%に過ぎないですが、中国が米国産の航空機を市場から締め出せば、エンブラエルにとっては発注が増えるチャンスとなりえます。

米国への輸出の影響はどうでしょうか。米国政府はメキシコに対しては厳しい姿勢を崩していませんが、他の中南米諸国に対して貿易措置を導入するといった発言や動きはあまり聞かれません。トランプ政権は米国の二国間貿易収支を「狙い撃ち」の判断材料とする向きが強いです。2017年の米国の貿易赤字国を見ると、中国(米国の貿易赤字額3,752億ドル)、メキシコ(同711億ドル)、日本(同688億ドル)、ドイツ(同642億ドル)が上位を占めますが、これらの国はいずれも槍玉に挙げられている国です。一方、ブラジル(米国の貿易黒字額77億ドル)、アルゼンチン(同47億ドル)、チリ(同31億ドル)、ペルー(同14億ドル)など中南米主要国はいずれも米国の貿易黒字となっています。中米・カリブ諸国も同様です。つまり、米国が中国製品に対して大規模な関税引き上げ措置を導入すれば、米国企業が中国からの製品の一部を関税引き上げの対象となる心配の少ない中南米諸国からの調達に切り替える可能性が生じると考えられます。

もちろん、今後の進展次第では貿易戦争を回避する可能性は十分にあります。両国が歩み寄る姿勢も見られ始めています。中南米諸国を含む世界への影響を考慮すれば一日も早い解決が求められます。

しかし、万が一貿易摩擦が悪化したとしても、中南米諸国のなかには資源国を中心に恩恵を受ける国もあるようです。

17