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TWI Global Business ニュースレター 第35号 09/25/2018

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

米墨合意で自動車関税発動リスクが上昇

 

米墨合意で自動車関税発動リスクが上昇

米国とメキシコはNAFTAの枠で暫定的な二国間合意を達成したと8月27日に発表しました。詳細はまだ明らかになっていませんが、米国通商代表部(USTR)の発表によると、自動車の原産地比率の現行62.5%から75%への引き上げや時給16ドル以上の労働者による40%(ピックアップは45%)以上の自動車部品の製造などが盛り込まれた模様です。その多くはメキシコが歓迎できる内容とはいいがたいといえます。

新NAFTA創設に向けたメキシコ側の動機はいくつか考えられます。米国のNAFTA脱退をちらつかせるトランプ大統領からの継続的なプレッシャー、12月1日にメキシコの新大統領に就任予定の左派オブラドール氏の存在などがそれです。そして米国が今年5月に開始した、自動車輸入に対するセクション232条調査がメキシコの譲歩を引き出す結果につながったと考えられます。トランプ政権はメキシコやカナダに対して自動車輸出に25%の追加的な関税を課す旨警告していました。

現在米国と交渉を進めているカナダの参加がなければ新NAFTAの実現は考えにくいでしょう。米国議会がトランプ政権に付与した貿易促進権限(TPA)はメキシコ・カナダ両国との合意を想定しています。さらには、目標の9月末までにカナダと合意しても実施法案が米国議会で審議されるのは来年以降となります。11月の中間選挙では民主党が多数党に返り咲くとの予想もあり、そうなれば法案成立のハードルは数段上がることになるでしょう。しかし、米国とメキシコの合意で追い込まれたカナダが合意すれば実現に向けた大きな一歩となることには違いないといえます。

ロイター8月28日付記事によると、メキシコ政府筋は米国政府とのあいだの合意事項として以下を挙げています: (1)乗用車・SUVについて、年間240万台の輸入枠を設定する。240万台以内であれば新たに合意した原産地規則を満たしている限りは無税、240万台を超えるものについては25%の追加的な関税が課せられる。 (2)新たに合意した原産地規則を満たさない乗用車・SUVはMFN税率と同じ2.5%の関税率が課される。 (3)自動車部品の輸入に関しては年間900億ドルを超えるものは追加関税の対象となる。900億ドル以内であれば新たに合意した原産地規則を満たしている限りは無税とする。

米国の2017年のメキシコ産乗用車・SUVの輸入台数は約180万台であり、240万台の輸入枠はメキシコにとってそれほど厳しいハードルとはなりません。加えて、メキシコのグアハルド経済大臣は現時点で対米輸出されている自動車の七割がすでに新しい原産比率や労働賃金に関する規則を満たしていると発言しています。

さらに経済大臣は「232条に基づく自動車への追加関税の適用からメキシコは最初に除外される国」とも発言しました。大臣のこの発言は、日本などの自動車輸出国にとっては大きな不安材料となりました。将来的な自動車追加関税発動の可能性が高まったことを意味するからです。一方のメキシコはもし措置が発動されれば対米輸出市場において高い優位性を確保することになります。

トランプ大統領の自動車貿易を巡る「チェス」が本格的になろうとしています。今後はメキシコに続いて米国政府との交渉に挑む国が増えていきそうです。

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