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TWI Global Business ニュースレター 第37号 11/30/2018

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

経済上向き予想も政治リスク残る -2019年中南米経済の展望-

 

経済上向き予想も政治リスク残る -2019年中南米経済の展望-

2019年の中南米経済は2018年に続きゆっくりと回復に向かう見込みです。IMF(10月発表)は中南米全体の実質GDP成長率を2018年には1.2%増、2019年には2.2%増と予測しています。特に太平洋同盟加盟国のメキシコ(18年2.2%増、19年2.5%増)、コロンビア(18年2.8%増、19年3.6%増)、ペルー(18年3.7%増、19年4.1%増)、チリ(18年4.0%増、19年3.4%増)の経済は堅調な伸びが予想されています。

中南米最大のブラジル経済は18年には1.4%増、19年には2.4%増と低成長ながら、16年まで数年続いた歴史的な景気後退からついに抜け出し、徐々に回復に向かっています。他方、マクリ政権のプロビジネスの政策で17年に回復を見せたアルゼンチン経済は今年に入り金融危機でつまずき、18年には2.6%のマイナス成長に戻りそうです。政情不安が続くベネズエラでも引き続きマイナス成長が予想されています。

2018年にチリ、コロンビア、ペルー、メキシコ、ブラジルなどの主要国で起きた大きな政治の転換が今後の経済に少なからず影響を与えていくと考えられます。まず、チリの右派ピニェラ新政権、コロンビアの中道右派ドゥケ新政権は税制改革や年金改革などを通じて投資家や企業寄りの政策を進めていくと見られています。

他方、不透明な部分が多く、不安視されているのはメキシコのオブラドール(AMLO)新政権とブラジルのボウソナーロ新政権です。メキシコは脆弱な財政や慢性的な外貨不足を背景にペソが大きく振れやすいことから、左派ポピュリストのAMLO政権は市場の混乱につながるような政策を取りにくいとの声が聞かれます。しかし、すでにメキシコシティー新空港建設の中止や現政権が自由化を進めてきたエネルギー分野への介入などに言及しており、12月1日の政権交代を前に投資家のあいだで懸念が広がっています。

10月28日の決選投票で圧勝したブラジルの極右派ボウソナーロ氏は最優先課題である犯罪や賄賂の撲滅に取り組む姿勢を鮮明にしています。その過程で警察権力の拡大などが予想され、同国の民主主義に黄色信号が灯っています。他方、自身が公約した経済関連四省の統合により新設予定の経済省のトップに自由経済主義者のゲジス氏を任命すると言われています。また、石油公社ペトロブラスの民営化や減税など「小さな政府」を目指す旨公約しており、今のところ市場からは支持を集めています。しかし、ボウソナーロ氏には国有企業を支持するなど「大きな政府」を求めた過去があります。公約どおりの政策を実施するかを現時点で確約するのは難しいと考えられます。

ボウソナーロ氏の外交政策は期待できる分野の一つです。自身が所属する社会自由党(PSL)は10月の選挙で議席を伸ばしたとはいえ少数党であり、内政を進めるには他党との協力が欠かせません。一方の外交政策は外務省を中心におおむねボウソナーロ氏の方針どおりに進めていくことが可能です。同氏は事あるごとにトランプ米大統領に尊敬の念を示し、労働党政権時代に悪化した米国との関係改善の必要性について主張しています。トランプ大統領もブラジルの貿易障壁の解消に向けて二国間FTA交渉の開始に関心を示しており、過去に米国とブラジルの間の対立が原因で頓挫した米州自由貿易地域(FTAA)創設のための交渉以来となるFTA交渉が実現する可能性もあります。

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