TWI Global Business LOGO

TWI Global Business ニュースレター 第38号 1/15/2019

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

新政権が始動 -明暗分かれるブラジルとメキシコ-

 

新政権が始動 -明暗分かれるブラジルとメキシコ-

1月1日、ブラジルではジャイール・ボルソナーロ新政権が誕生しました。元軍人で極右派のボルソナーロ大統領は、その相次ぐ過激な発言で「南米のトランプ」と呼ばれるほどです。しかし、国民の求める政治腐敗の撲滅や治安の改善を政策の最優先事項に位置付けると同時に、経済関連三省の統合により新設された経済省のトップに自由経済主義派のパウロ・ゲジス氏、中央銀行総裁にはサンタンデール銀行での経験豊富なカンポス・ネト氏、ブラジル開発銀行(BNDES)総裁には市場からの信頼が厚いジョアキン・レビー氏を指名するなど、市場の安定に気配りした強力な布陣で固める意向を示しています。

ボルソナーロ政権は発足後すぐに財政のネックとなっている年金の改革、国営企業の大規模な民営化、空港、鉄道、港湾施設などのインフラ整備に向けて準備に取りかかりました。自身が所属する社会自由党(PSL)は少数党であり、議会では他党とのあいだでかなりの調整が求められることになります。4日には左派系の政府関係者約300名の解雇を命じるなど、同氏の強引なやり方に対する左派からの強い反発も予想されます。しかし、市場関係者のあいだで「最後のチャンス」とまで言われるブラジルの経済改革に迅速に取り組む姿勢は明らかです。 米中貿易摩擦の影響など国際経済に不確実性が増す中での出発となりました。ブラジル経済も景気の底を打ったとはいえ、力強い回復は見込めません。しかし新政権にとっての朗報は、ミッシェル・テメル前大統領が築いてきた経済改革に向けての下地があることです。10年以上続いた左派労働党(PT)政権が残した負の遺産は小さくありません。ばら撒き政治、膨れ上がった財政赤字、何よりも手厚い国内産業・労働者保護を通じて国民のあいだで社会主義のマインドが広がっていきました。PTのルセフ元大統領の罷免後に就任したテメル氏は、低い支持率や自らの腐敗問題に追われながらも政府支出の上限の設定、労働法の改正、エネルギー分野の外資への開放など、「社会主義国」ブラジルのビジネス環境の改善につながる政策を実現してきました。逆風が吹く中でテメル氏の作ったプロビジネスの流れに乗れるかどうか、新政権の手腕に注目が集まります。

自由経済路線に向かうブラジルと反対の方向に進んでいるのがメキシコです。12月1日に発足した左派ポピュリストのロペス・オブラドール政権は、ペニャニエト前政権が進めてきたエネルギー改革の見直しや130億ドル規模のメキシコ新国際空港の建設の中止などを発表しています。 ボルソナーロ大統領のPSLとは異なり、オブラドール大統領のモレノ党は上下両院議会で多数を占めており、左派ポピュリストの勢いに対するチェック機能が手薄の状態となっています。金融市場の不安定性が増す中、メキシコでは財政規律が今まで以上に求められています。そんな中で石油公社ペメックスによる石油精製工場への投資、それに伴う予算の大幅増に関する政府の発表で市場の不安が一気に高まりました。非効率な経営が問題視されていたペメックスによるエネルギー市場の独占にメスを入れ、外資に対して門戸を開いた前政権の政策の流れに逆行しています。 製造業も影響を受けそうです。新政権はすでに労働者の最低賃金を16%ほど引き上げました。1日発表のメキシコ国境北部における自由貿易特区新設構想によると、当該地域での賃金を現在の二倍に引き上げる案が含まれています。11月末に署名された新NAFTA(USMCA)のルールにより、USMCA発効後には現地の自動車メーカーは賃金の引き上げを迫られることになりますが、それに輪をかけてオブラドール政権による賃上げ策に悩まされそうです。

4日のブラジルの株式市場は過去最高の高値を記録、通貨レアルは1月に入り対ドルで上昇を続けています。一方のメキシコの金融市場は不安定性が増している。当面は両国のあいだで明暗が分かれそうです。

17