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TWI Global Business ニュースレター 第40号 4/17/2019

TWI Global Business (Div. of Teruko Weinberg Inc.)

目次:

「弱腰」外交、それとも? ― トランプ国境封鎖に対するメキシコ大統領の反応 ―

 

「弱腰」外交、それとも? ― トランプ国境封鎖に対するメキシコ大統領の反応 ―

中米諸国出身者を中心とする避難民流入への対策に手を焼くトランプ大統領は、3月29日にメキシコとの国境を翌週に封鎖すると発表、メキシコのみならず米国内でも懸念する声が急速に広がりました。「国境封鎖」の定義を明確にしなかったため、移民や通勤者、旅行者など「人の移動」だけに適用されるのか、それとも両国間の物流も対象とするのかなどの憶測を呼びました。

米国議会や地方政府、業界団体から批判の声が相次ぐと同時に、トランプ政権内でもサプライチェーンへの影響を懸念する声が聞かれたことから、トランプ大統領は(実情は不明ながら)メキシコ政府が同国南部国境付近での避難民の取り締まりを強化したことを理由として「メキシコ政府に一年の猶予を与える。同政府が不法移民や麻薬の密輸問題を解決しなければ自動車輸入に対する25%の追加関税を発動する」と当面は矛を収める姿勢を明らかにしました。他方、税関職員を避難民対策に配置換えしており、職員の不足を原因として貨物トラックの渋滞が続いているとの報道も見受けられます。 上記の一連の騒動で不可解なのがメキシコ政府の動きです。トランプ大統領の一方的な言動や脅しに対して非難する声はオブラドール大統領からは聞かれません。2018年の選挙戦中にトランプ大統領への批判を繰り返していた同氏の姿はすっかり影を潜めています。無論、同氏の最優先課題は外交ではなく内政にあります。外交では基本的には内政不干渉のスタンスを採っており、たとえばベネズエラのマドゥロ政権に対する米州諸国の批判が強まる中、オブラドール大統領は対話重視の姿勢を続けています。

移民局との面会までの期間には避難民にメキシコ側への在留させるようトランプ政権は命じていますが、それに対してオブラドール大統領は立ち往生している避難民に仕事を与えるなど寛大に対処しています。メキシコの失業率は低い水準にあるとはいえ、急増する避難民に仕事を与え続ければティフアナなどの国境都市で市民のあいだで不満が強まることは想像に難くありません。また、メキシコは伝統的には米国とのあいだで独立性を保ちつつ衝突を避ける外交方針を基本としていましたが、長期政権の制度的革命党(PRI)体制が2000年以降に崩れてからは米国政府に対しても強く「物申す」政府が普通となっています。トランプ大統領に対して強い反感を抱くメキシコ国民はオブラドール大統領が選挙戦中に見せた強い姿勢に期待しており、いつまでも「弱腰」ではいられない局面がくる可能性を排除できません。

一年の猶予が与えられたオブラドール大統領がどのような出方をするのか注目されます。

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